カバラとタロットの関係その1

タロットとカバラが本格的に関係付けがされたのは、19世紀のオカルティスト”エリファス・レヴィ”の著書『高等魔術の教理と祭儀』で記述されたタロット理論以降に入ってからです。

その後19世紀待つにロンドンの魔術結社「黄金の夜明け団」がレヴィの考えをさらに発展させ、カバラはタロットを理解する上での強力なツールとなりました。

カバラとはヘブライ語で「伝統」という意味です。

12世紀頃に当時のフランス、プロバンス地方の盲人イサアクという人物を中心に、神秘的な実践を指すために「カバラ」という言葉が使われ始めました。それ以後、ユダヤ教内でその起源から現在に至るまでのあらゆる秘密教義運動や神秘主義の実践の相対を示す用語として、広く普及します。

元々、「神秘主義」とは人と神とが合一するという究極の体験を得ることを目指す思想・実践のことです。カバラだ最重要な考えが「生命の樹(セフィロトの樹)」が、この教義の根幹を成しています。

生命の樹ユダヤ教義の中で発展したものですが、その根本は旧約・新約聖書や預言書、および預言書外典に暗喩として記されています。ユダヤ教では「ヤハウェエロヒム絶対神を唯一の神としている一神教です。

しかし、実際の生命の樹は3本の柱があります。中央の一番高柱がヤハウェエロヒムの均衡の柱、右がイエス・キリストの慈悲の柱、左が精霊の峻厳の柱です。キリスト教では三位一体と記している「父と子と聖霊」の3つの柱があるわけです。では、三位三体ではないか、という論議は後述にすることとして、このセフィロトの樹には10個の円が描かれています。これを「セフィロト(単数形ではセフィラー)と言います。

そしてこのセフィロトを結ぶ線(パス)が22本あります。

上層部から順にセフィロトを記すと、「ケテル」「コクマー」「ビナー」「ケセド」「ゲブラー」「ティフェレト」「ネツァク」「ホド」「イェソド」「マルクト」と呼ばれています。

このセフィロトが10個あるのは、神から発せられるエネルギーが「十の段階」を経て流れ出てくる結果、この世界が造られたことを意味しています。

要はセフィロトの樹とは、神・・全ての根源から我々の住む世界を作ったプロセスを説明しているわけです。

もう1つ、セフィロトの樹には重要な意味があります。先ほどの世界形成のプロセスの説明以外に、人が神と一体になるための装置という意味もあります。

セフィロトの樹は始原の根源である「神」の叡智・力が、1番上の「コクマー」から下界の我々の世界に、順に巡っている状態を示します。逆に1番下の「マルクト」から始まり、セフィロトの樹を登る事で神に近づくことを意味しています。

エリス・レヴィはタロットとカバラを結びつけた最初の人物ですが、その概念はセフィロトの樹のパスにあります。セフィロトには22のパスがあり、この「22」という数字は、大アルカナの22枚に対応しています。
そしてこのパスにはそれぞれヘブライ文字が付されていますが、その文字に大アルカナの各1枚が対応するようになっています。

<レヴィによるカバラ ヘブライ文字とタロットカード大アルカナの対応>
アレフ (ケテル → コクマー) 魔術師
ベート (ケテル → ビナー) 女教皇
ギーメル (ケテル → ティファレト)女帝
ダレット (コクマ → ビナー)皇帝

ヘー (コクマー → ティファレト) 法王

ヴァヴ (コクマ → ケセド) 恋人

ザイン (ビナー → ティファレト)戦車
ヘット (ビナー → ゲブラー)正義
テット (ケセド → ゲブラー)隠者
ヨッド (ケセド → ティファレト)運命の輪
カフ (ケセド → ネツァク)力
ラメド (ゲブラー → ティファレト)つるされた人
メム (ゲブラー → ホド)死神
ヌン (ティファレト → ネツァク)節制
サメフ (ティファレト → イェソド)悪魔
アイン (ティファレト → ホド)塔
ペー (ネツァク → ホド)星
ツァディー (ネツァク → イェソド)月
コフ (ネツァク → マルクト)太陽
レーシュ (ホド → イェソド)審判
シン (ホド → マルクト)愚者
タヴ (イェソド → マルクト)世界

ただ、このレヴィの対応には1か所 奇妙な点があります。
「愚者」のカードが「審判」と「世界」に挟まれているのです。
そこで、黄金の夜明け団がこのレヴィの対応表に修正案を出します。